糖尿病
糖尿病
糖尿病は血糖値が慢性的に高くなってしまう病気です。大きく1型糖尿病と2型糖尿病に分かれており、特に2型糖尿病の患者様の数は1型糖尿病に比べて圧倒的に多く、生活習慣病の一つとされています。発症には血糖値を下げる働きを持つインスリンというホルモンの分泌不足・作用不足に加え、過食、運動不足、肥満、ストレスといった生活習慣が関係していると考えられています。
高血糖が持続すると血管が障害され、身体の様々な臓器に影響を与えます。とくに神経や血管が集中している臓器が影響を受けやすく、三大合併症といわれる糖尿病網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病神経障害を引き起こします。また、動脈硬化は高血糖を促すことに加え、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、末梢動脈疾患といった病気の危険因子にもなります。血糖のほか、コレステロールや中性脂肪、血圧といった要素も、すべて2型糖尿病と関連しています。
2型糖尿病は初期症状がほとんどなく、他の生活習慣病との関連性が深い病気です。糖尿病の進行や重大な合併症を防ぐためにも、健康診断などで糖尿病を指摘された場合は、放置せずにきちんと受診することが重要です。
当院では院内に最新の測定機器を導入しており、血糖値、HbA1cの結果は当日ご説明できます。
糖尿病の症状は人によって様々です。初期は自覚症状が乏しく早期発見が難しい病気です。
気になる症状がある方や、健康診断などで『血糖値が高め』、『尿に糖が出ている』といった指摘を受けた方は早めの受診をお勧めします。
血糖値は食事の前後や時間帯などによって大きく変動します。そこで安定した血糖値の状態を表す指標として、現在、広く使われているのがHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)です。過去1~2カ月の平均血糖値を反映し、糖尿病の合併症予防のための血糖コントロールの管理に有効とされています。
糖尿病の診断基準は以下になります。
1度の検査で(1)~(3)のうちの1つと(4)が同時に確認された場合、糖尿病と診断されます。
血管は血液を全身に循環させる、いわば水道管・ホースの様な重要な働きを持っていますが、糖尿病になると血糖値が高い状態が続き、その血管を傷つけたり、血液をドロドロにしたりして様々なダメージを血管に与えます。とくに細い血管は影響を受けやすく、細い血管が集中する網膜、腎臓、手足に早いうちから障害が現れてきます。これが三大合併症(細小血管障害)といわれる「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」「糖尿病神経障害」です。
また、高血糖の状態は毛細血管だけではなく、太い血管にも影響を与え、大血管障害と呼ばれる脳梗塞や心筋梗塞など、命にかかわる重大な病気を引き起こすこともあります。
これらの合併症は糖尿病と診断されたときから進行し、5~10年くらいで出現すると考えられています。
高血糖の状態を放置しておくと、失明、透析、手足の壊疽(えそ)などを引き起こす可能性もありますので、きちんと治療を受け、合併症を予防していくことが重要です。
初期から自覚症状なく進行します。網膜の毛細血管が傷つき視力低下や出血を起こし、最終的に失明に至ることもあります。近年、糖尿病網膜症は日本人の失明原因の上位3位に常にランクインしています。糖尿病と診断されたら、自覚症状がなくても定期的に「眼底検査」を受け、良好な血糖コントロールを継続的に行っていくことが大切です。当院は同じ敷地内に眼科クリニックが併設されており、内科の受診と併行してスムーズに眼科診察を受けていただけます。
腎臓には糸球体という毛細血管のかたまりがあり、血液をろ過しています。高血糖の状態になると、この糸球体が傷つきやすくなり、放置することで徐々に腎臓が傷つけられ、尿と一緒にたんぱく質も出てきます。最終的には『腎不全』と呼ばれる状態になり、人工透析が必須となってしまいます。日本の人工透析の原因は、糖尿病腎症が最も多く、喫緊の課題となっています。糖尿病腎症を予防するためには、継続的な血糖コントロールと定期的な尿検査を行っていくことがとても大切です。
糖尿病は手や足の末梢神経にもダメージを与えます。症状としては、手足がしびれたり、悪化すると痛みの感覚が鈍くなったりします(けがや火傷の痛みに気づかないなど)。とくに足は症状が悪化すると壊疽に至りやすく、場合によっては足の切断を余儀なくされる場合もあります。自覚症状が出た場合は、早めに医師に相談してください。
脳梗塞、心筋梗塞、脳卒中、皮膚病、感染症、閉塞性動脈硬化症、歯周病なども合併症として挙げられます。当院は同じ敷地内に歯科クリニックが併設されており、内科の受診と併行してスムーズに歯科診察を受けていただけます。
1型糖尿病ではインスリンの必要量が不足しているため、インスリン注射によって補う治療が中心となります。2型糖尿病ではインスリンの作用不足が主な原因であることが多く、食事療法、運動療法、薬物療法の三つが柱となります。いずれのタイプの糖尿病についても、合併症の発症・進行を予防するために血糖をコントロールしていく事になります。
糖尿病において食事療法は治療の根幹となります。炭水化物、たんぱく質、脂質の三大栄養素をバランスよく摂ることや、ビタミン、ミネラルなどを欠かさず十分に摂取することが大切です。具体的には「糖尿病食事療法のための食品交換表」(日本糖尿病学会)という表を利用し栄養バランスの良い食事を摂ります。2型糖尿病の場合、厳格に食事療法を行うことで大幅に血糖コントロールが改善する可能性があります。医療機関で医師や栄養士から指導を受けたり、講習会に参加したりして、栄養バランスのとれた食事の仕方を覚えるようにしましょう。
運動で体内に余分に溜まったエネルギーを消費することで血糖値が下がります。また、インスリンが効きやすくなり(これを『インスリン感受性が高まる』と表現します)、良好な血糖コントロールを得やすくなります。運動療法としてはウォーキングや自転車、スイミング、ジョギングなどの有酸素運動を1回20~40分、週に3回実施します。
週末に集中して運動するといった方法よりも、できれば毎日行える運動を選びましょう。
2〜3カ月ほど食事療法と運動療法を続けても、血糖のコントロールが上手くできない場合には薬物療法を検討します。薬物療法には経口血糖降下薬を用いる内服療法と、インスリンなどを注射で補充する自己注射療法の二つがあります。近年、糖尿病治療薬は大きく進歩しており、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬などが登場しています。これらの薬は糖尿病治療の過程で生じることがある低血糖を起こしにくく、体重を減らす作用を持つものもあります。どの薬物をいつから開始するかは、患者様の糖尿病のタイプや合併症の進行程度などによって、総合的に判断して決められます。
糖尿病の治療には患者様の自己管理がとても大切です。当院では糖尿病とその療養指導に関して幅広い専門知識をもって、患者様が適切な自己管理が行えるように援助します。
ご自身の生活スタイルに合った食事療法を続けていくためには、「栄養指導」を活用することも有効です。食事療法が身に付いてうまく血糖をコントロールできている方も多くいらっしゃる一方、懸命に食事療法に取り組んでいても、思ったように効果が出ない、何をどう改善すれば良いのかよく分からない、と感じている方もおられます。こうした食事療法の問題点を専門のスタッフとともに解決していくのが栄養指導です。