
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は、睡眠中に一時的に呼吸が止まる疾患です。夜間就寝している間、呼吸の停止がおおよそ1時間に5回以上起こり、それぞれの停止が10秒以上持続する際には、この疾患の可能性があります。
代表的な症状は“いびき”で、眠りが浅くなるため、日中に強い眠気や倦怠感を生じることがあります。放置すると、血管や心臓、脳などの臓器に負担がかかり、高血圧や心臓病(狭心症、心筋梗塞)、脳卒中などを合併することがあります。そのため、できるだけ早く診断し、治療をはじめることが大切です。
原因として、鼻から『のどぼとけ(喉頭)』にかけての狭窄があります。狭くなった気道を空気が通ることで“いびき”が生じます。いびきの要因には、肥満による首や喉(のど)まわりの脂肪沈着、扁桃肥大、舌根(ぜっこん)・口蓋垂(こうがいすい)・軟口蓋(なんこうがい)による狭窄、あごが十分発育していない小顎症(しょうがくしょう)など、解剖学的なものがあります。男性は30~60代によくみられ、女性は更年期以降に多く、閉経によるホルモンバランスの変化も一因とされています。
糖尿病、高血圧、高コレステロール血症などの生活習慣病を持つ患者さんは睡眠時無呼吸症候群を持っている事が多いと言われています。
・夜間ねている時 いびきがひどい、呼吸が止まる・むせる、寝相が悪い、寝汗をよくかく、夜間頻尿 など
・朝起きた時 頭痛、口の乾き、長時間寝ても疲れがとれない、熟眠感がない、体が重く感じる など
・日中 眠気、だるさ、集中力・記憶力の低下、いつも疲れやすい、居眠り など
検査はご自宅でできる簡易検査と、専門の医療機関に一泊して行う精密検査(終夜睡眠ポリグラフ検査:PSG検査)があります。簡易検査は手指や鼻下にセンサーを装着し、睡眠中の呼吸などを調べます。精密検査は脳波計や心電計などを用いて行う詳細な検査です。
当院では携帯型の検査装置を取り扱っており、自宅で簡便に簡易検査を行うことができます。
治療は大きく分けて対症療法と根治療法があり、重症度や原因に応じて選択します。代表的な対症療法には、CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)があります。
最も推奨されている治療法が経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP: Continuous positive airway pressure)です。睡眠中に鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道を開存させて治療します。睡眠中の無呼吸・いびきが減少し、眠気の改善や血圧を下げる効果も期待できます。
また、その他にも呼吸の予防・治療に有効な口腔筋機能療法や、寝る向きを矯正する体位療法などが有効なこともあります。
睡眠時無呼吸症候群の病態は大きく分けて次の2種類があると言われています。すなわち、呼吸運動は保たれているものの、上気道のどこかの閉塞によって、鼻・口の気流が停止する「閉塞性」の睡眠時無呼吸と、もう一つは呼吸運動そのものが停止する「中枢性」の睡眠時無呼吸です。特に「閉塞性」は有病率が高く、次に挙げるような様々な疾患と関連することがわかっています。
・高血圧
閉塞性睡眠時無呼吸(以下、閉塞性)は、高血圧の原因になる可能性があり、閉塞性の患者さんの半数に高血圧が認められ、高血圧患者さんの3割に閉塞性が認められるという報告もあります。また、薬物治療に抵抗性のある高血圧症に、閉塞性が隠れている可能性も指摘されています。
・虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)
冠動脈疾患を有する方が閉塞性を合併する率は、冠動脈疾患のない方の約2倍といわれています。
・不整脈
閉塞性は不整脈を合併することが多く、無呼吸の増加や低酸素血症の悪化に伴い、合併頻度も高まります。とくに夜間の不整脈は、半数近くの閉塞性患者さんに認められ、重症度では、その発症リスクが2〜4倍に高まるとされています
・脳卒中
脳卒中の発症リスクが高まるとされています。とくに50歳以上では、脳卒中および死亡リスクが閉塞性でない方の約2倍という報告もあります。